自己破産しても免責にならない債権とは?非免責債権を紹介
自己破産をすることができれば返しきれなかった債務を免責でき、一度債権債務関係をリセットすることができます。しかし無条件に免責されるわけではありませんし、免責をすることが法的に認められていない債権もあります。
自己破産をしても免責できない債権については特に要注意です。ここではその具体例を紹介していきます。
自己破産をしても責任を免れない債権がある
破産法では、免責許可決定が確定したとき、破産債権に関しての責任を免れることができると規定しています。しかしそのルールを規律した条文には「一定の請求権についてはその限りではない」とも定められています。
配当に関するもの以外広く債権は免責されるものの、特定の債権については自己破産をしても支払いの義務がなくならないということです。
この債権はその性質上「非免責債権」とも呼ばれています。
非免責債権の種類
破産法で掲げられている非免責債権の種類は、ざっと次のようにリストアップすることができます。
- 税金や社会保険に関する債権
- 害意に基づく不法行為への損害賠償請求権
- 故意・重過失で生命身体を害した不法行為への損害賠償請求権
- 養育費等の請求権
- 未払い給与等の請求権
- 債権者名簿に記載しなかった債権者の請求権
- 罰金や追徴金等の請求権
各非免責債権の詳細を見ていきましょう。
税金や社会保険に関する債権
「租税等の請求権」は非免責債権の代表例です。
税金、例えば所得税や住民税、固定資産税、自動車税などの支払いを滞納しているとき、自己破産をしても支払い義務はなくなりません。
健康保険や国民年金、雇用保険などの社会保険料の滞納がある場合も同じです。
支払い時期について猶予を受けられることはあっても「自己破産をすれば一切支払わなくていい」ということにはなりませんので注意しましょう。
害意に基づく不法行為への損害賠償請求権
「不法行為を悪意ではたらいたときの損害賠償請求権」も非免責債権の1つです。
うっかり他人に損害を与えてしまった場合の損害賠償請求権はここに該当せず、加害者である本人に“悪意”が存在していないといけません。
ここでの“悪意”が認められるには少なくとも、わざとやったという“故意”が必要ですし、さらに相手方に危害を加えてやろうという“害意”を持っていることも必要です。
単に故意的に行うだけでは害意があるとは評価されませんので、例えば不倫に基づく慰謝料請求権でも、積極的に配偶者を害する意思を持つなど特別な状況下でなければ非免責債権には該当しません。
一方で詐欺や窃盗などの犯罪を故意で行い、被害者からの損害賠償請求を受けるときは、その支払い義務を免れることはできない可能性が高いです。
このような背景を持つ不法行為については、破産という制度をもってしても加害者の責任を免除すべきではないとの考えに基づいています。
故意・重過失で生命身体を害した不法行為への損害賠償請求権
“悪意”に基づく不法行為以外でも、①故意または重過失で、かつ、②生命や身体を害する、場合の不法行為に基づく損害賠償請求権は、非免責債権に該当します。
行為者(加害者)が“悪意”を持っている場合より悪質性は低いともいえますが、被害内容が財産ではなく被害者の身体や生命に及ぶときは被害者救済の観点からも損害賠償義務を免責すべきとはいえません。
そこで破産法でもこのときの損害賠償請求権を非免責債権として定めています。
交通事故に基づく損害賠償請求権もこれに該当する可能性があります。この場合は“重過失”の認定が争点になるでしょう。重過失を平たく説明すると「少しの注意で回避できはずのミス」ともいえますが、何が重過失にあたるのか明確な区分はありません。
養育費等の請求権
夫婦間には、互いに協力・扶助をする義務が課されています。子どもを監護することも親の義務です。
このように家族間には、親族以外の他人とは異なる結びつきがあります。赤の他人であれば別途契約を締結しなければ権利義務関係は発生しませんが、配偶者に対する債権、子どもに対する債権などは契約を結ばなくても当然に発生するものがあります。
例えば婚姻中の生活費は互いに分担する義務がありますし、親には子どもの養育費を負担する義務があります。これらに係る債権は破産という仕組みをもってしても免責すべきではなく、自己破産後も支払い義務が残り続けます。
例えば養育費の場合、「月々5万円の支払い義務」などが親権を持っていない方の親に課されることもありますが、自己破産をしても変わらず子どものために負担を負わないといけません。
未払い給与等の請求権
給与に関する債権は労働者の生活にかかる重大な存在です。そこで破産法上も特別な取り扱いになっており、非免責債権の1つとして列挙されています。
ただ、法人による自己破産では法人格が消滅して企業そのものが消滅してしまいます。債務者がいなくなくため結局のところ企業を相手に請求することはできなくなり、非免責債権の関係で未払い給与が問題となるのは個人事業主の場合に限られます。
債権者名簿に記載しなかった債権者の請求権
自己破産をする方は、債権者名簿を作成して裁判所に提出しないといけません。漏れなくすべての債権者を記載してその後の手続を進める必要があるところ、「債権者名簿への記載をしなかった債権者」がいると、その債権者に係る債権は非免責債権となってしまいます。
一応破産法の条文には“債権者のことを知りながら記載しなかった場合”といった旨も記されているのですが、これは“故意で記載しなかった”場合だけでなく、“ミスで記載から漏れた”場合も含まれると考えられています。
債権が存在していることを本当に知らなかった分についてはこの限りではありませんが、債権者名簿を作成するときは十分に注意をしないといけません。
罰金や追徴金等の請求権
犯罪により刑罰で罰金や科料を科された方、納税に関するペナルティで追徴金を課された方、行政上のペナルティで過料を課された方などは要注意です。これらに係る債権は非免責債権ですので、自己破産をしても支払いを免れることはできません。
犯罪行為や脱税行為等の不正行為に基づく制裁を許すべきではないとの考えに基づく規定です。
払えないときの対応
上記非免責債権に基づく金銭の支払い義務が多く残っており困っているという方は、一度弁護士に相談してみましょう。債権の種類に応じて取るべき最適な対応についてのアドバイスが受けられます。
例えば支払い時期についての猶予を受けるための制度が利用できたり、債権者との交渉で猶予をしてもらえたり、といった可能性もあります。
債務者自身による交渉だと上手くいかないときでも、弁護士に頼んでスムーズにいくこともありますので、プロの活用も視野に対応を考えていくと良いでしょう。
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